SHOOTING TEST vol.1 – RONIN4D Katagai beach
2024.08.10
WRITED by 池田あゆみ
月に一回は社内研修として何かしら目的を持った撮影と制作をしたいと考えており、7月は渋谷にて外ロケでの写真撮影、スタジオシューティングを実施。
そして8月では映像撮影の研修として千葉県の片貝海水浴場に出向いた。
先月に引き続きモデルを引き受けてくれた雪乃さん、BTS撮影をお願いした株式会社ARUKIBITOのミヤモトワタル君、そして弊社からは私(代表:池田)と3月から加わってくれたセシルの2人の計4人チームとなった。
役割と目的
弊社メンバーの役割と目的を以下のように定義した。
池田 - ディレクター
- 照明ディレクション
コントロールが難しい自然光の元で被写体を魅力的に撮影すること。
目指すルックは日焼け止めのCMのような「明るくスムーズな肌感+夏の日差しのコントラスト」
- サウンドデザイン
現場で収録した音声をメインSFXとしてゼロからサウンドデザインを作ること。
セシル - メインカメラオペレーター
- RONIN 4Dオペレーション
今回初めて実戦で使うことになるRONIN4Dをしっかりと使いこなすこと。
常に変化する自然光の元で適正露光を取り続けること。
コンテで示されたカット、カメラワークを再現すること。
また、今回の撮影で使った(使いたかった)新しい機材や小物たち
- DJI 高輝度遠隔モニター
NP-Fバッテリーを忘れ使用不可。
-マイラーフィルム
海から反射したコースティクスを擬似的に再現するために使用。
するつもりがこちらも家に置いてきた。
-SENNHEISER MKE600
全体の環境音、というよりは狙ったサウンドのみを収録しそれらを複数種類掛け合わせることで意図した音響演出を作ることを目的として導入。これは持ってきた。
- パラボラ集音器
パラボラアンテナの中心に無指向性のマイクRode videomicroを取り付けたオリジナルのパラボラ集音器。MKE600などのショットガンマイクより高い思考性で狙ったサウンドをより際立たせて収録することが目標。
サウンドデザイン
普段、クライアントワークでは一切要求されないサウンド。
自社制作ぐらいでしか経験を積めないため今回は特に気合の入った音声システムで挑んだ。
上記で示した2つのマイクをZOOM F3の2chに同時に接続して収録した。
1chをMKE600(中程度の指向性)、2chをパラボラ集音器(かなり高いの指向性)とし、これら2chの強弱をコントロールすることで視聴者がそのサウンドにどのくらい注目しているかをコントロールする。
2ch収録できるレコーダーではステレオ収録が魅力的なように思える。
私たちがそれを行わないのはそのサウンドがどの方向から聞こえてくるかはポスプロで自由に調整するためである。
自作のパラボラ集音器はお皿部分(パラボラディッシュ)が非常に薄く、またサイズも不十分なため目標としているほどの指向性は得られなかったように感じる。
また特に高音が目立って反響して収録されたようにも感じるため、パラボラ集音器についてはこれからも改善を続けていきたい。
メインカメラオペレーション
セシルはほとんど初めて触ることになるRONIN4Dだったが、コンテ通りに素晴らしい映像を撮影してくれた。
RONIN4Dの特徴として気に入っているのがRONIN4D Liderシステムである。
オールドレンズやシネレンズといったMFレンズをAF化してくれるフォーカスギア系のガジェットとは一線を画するのがこのウェーブフォームである。
小さいモニターでフォーカスが合っているかどうか確認するのはかなり難しいが、このウェーブフォームはフォーカスの距離と被写体との関係を視覚的に表示してくれる。
20m以上離れた被写体はこのLiderシステムで検知できなかったり、演出でスモークなどを焚くと距離が測れなかったりすることもあるが、
このシステムのためだけにこのカメラを買った自分としては現状大満足している。
照明ディレクション
今回の撮影で一番反省するべき部分であり、勉強になったのが照明である。
直射日光をレフ板のディフーザーで全て遮り、任意の角度からスポットライトを当てて疑似直射日光を再現する。
そうすることでどんな画角においても直射日光により顔に意図しない強い影が出てしまうことを避け、全てのカットで任意のライティングを再現することができる。
はずだったが、風の強い砂浜でレフ板やディフューザーを三脚で固定するなどできるはずもなく、スポットライトですら設置することが困難だった。
結局行えたのは直射日光を白レフで返すことぐらいで、マイラーフィルムを忘れてしまった身としては他にできることは何もなかった。
ポストプロダクション
カット割、カラーグレーディングをDavinciResolveで行い、その後AfterEffectsにて細かな調整とVFX、全体に撮影効果を追加して完パケ。というのがいつもの流れだが、今回はここにpremiere proでのサウンドデザインが加わった。
サウンドデザインでは収録してきた波の音や砂浜、水辺での足音をそれぞれ分解し、映像に合うように調節した。
視聴者の自我がカメラにあるのか、被写体にあるのかを意識しながら音がどこから聞こえるべきか注意し左右に配置。録ってきた音だけでは足りない箇所が合ったのでartlistから拝借し同様に並べた。
カラーグレーディングでは青空のコントラストを表現しつつも、被写体のスムーズな肌表現にこだわった。
露出が少しでも上振れしていたら空のコントラストはここまで戻すことができなかったと思う。メインカメラのセシルの見事な露出管理だった。
日が沈むにつれて空のマゼンタが徐々に強くなっていく。想定していたので時系列順に撮影を行なったつもりだったが一部夕焼けのシーンを序盤で使う必要があり、このマゼンタの処理に苦戦した。
マジックアワーの撮影ではこれからも注意するべき部分だ。
AfterEffectsでのVFXは特に弊社の強みだが、今回はあくまでもVlog風なRONIN4Dの撮影映像として仕上げたかったので控えめ。
あとがき
初めての自社制作では合ったがとても気にいるものが作れたと同時に、狙った研修内容を獲得することができたいい機会になったと思う。
素敵な演技をしてくれたモデルの雪乃さん、これらの記事を執筆するにあたり必要な素材を撮影してくれたワタルくん、この場を借りて改めて感謝申し上げます。
株式会社emo 代表取締役 池田あゆみ